第1章 残り続ける想い
 
 
「……どうして」
 少女は学校から帰り、自室に入った途端、糸の切れた人形のようにその場にへたり込んでしまった。
「……どうして死んだのよぉ」
 月曜日の今日、いつものように登校していつものように親友に会うことができると思っていたが、そうではなかった。
 朝のホームルームで知らされた衝撃の内容。朝から帰宅した今でも呟き続けている言葉。今でも信じられない。
「土曜日の夕方ってその日って」
 親友は土曜日の夕方、帰宅途中に自動車事故に遭って亡くなってしまったのだ。その日がまた彼女に余計な余韻を残す。
「……私に電話した後じゃない。どうして」
 土曜日の夕方、親友が亡くなる少し前に電話があった。ただ、取ることができず、伝言としてメッセージが記録されていたが。
「……私はどうしたらいいの。どう答えたらいいの。もう」
 残された言葉はあまりにも予想外の告白だった。その告白にどう返せばいいのか分からず、悶々とした思いで通学したというのに。あまりにもひどい現実。
「何で死んだの。会えなくなるなんて」
 抱く思いは友人とは違っていても大切には思っていた。もうその大切なものはない。明日、学校へ行っても友人の席は空っぽ。それがとてつもなく寂しい。
「……どうして」
 携帯電話を服のポケットから取り出し、消さずに残している友人の最期の伝言を再生した。
「……うわぁぁ」
 携帯電話を握りしめたまま涙を流して泣き続けた。
 
 時が経てば、この出来事は高校時代に起きた悲しい思い出になるだろうが、今はまだ思い出にはできない。ただ、涙が溢れて悲しみと共に楽しかった思い出を呼び起こすばかりだった。