第1章 砂漠の先にあるもの
 
 
 人生を変える衝撃的な出会いから数ヶ月、様々なことが起きた。
 あの日の砂漠で知った出来事は誰にも口にはしなかった。口止めはされなかったが、自分自身が口にできなかった。あの少女の言葉通り世の中には知らなくても生きていけることはあるのだからわざわざ知らせる必要はないと思ったからだ。
「……今日はきっと会える」
 彼女には分かっていた。あの奇跡の出会いが再び訪れることを。
 あの日、自分が住むこの世界と街と果てしない砂漠とを繋げる眼鏡の秘密を知った。
 多くの人が知らずに平和な生活をしている中、自分だけが知った。
 そして、知った代償として決めなければならなかった。自分の生きる場所や先を。
「……きっと」
 眼鏡を握り、遙かに続く砂漠を睨んだ。時々吹く風が現実であることを教える。
 決意できるまで何度もこの道を通ったが、少女達に出会うことはなかった。きっと自分との約束を守って気を回してくれていたのだろう。
「……私は決めた。時間はかかったけど」
 遙か先を見つめ来るべき者を静かに待つ。
 覚悟はできた。自分の決定にも人生にも大切な人達に対しても。全てはたった一つの答えのために。
「……来た」
 先に二人の少女が現れ、体が緊張し、喉が渇く。
 もう決めて悔いがないのにこれからのことを考えると立っていられない。
「……大丈夫」
 自分に言い聞かせ、少女達を待つ。
 きっと一番に訊ねる。
「答えは出たの?」
 と。
 歩むことはせずにこれまでのことを思い出していた。全ての始まりと奇妙な出会いを。